เข้าสู่ระบบ大会当日
大会のルールは魔法、魔術あり、真剣あり。寸止めは必要なく戦闘続行不可能と審判が判断すれば試合終了。
実質初撃で致命的な一撃を負わせることができれば殺しもありの、
ほぼルール無用の地下闘技場にありがちな過激な大会規定だったはずだ。だが、急遽真剣は木剣となり、
魔法、魔術も呪い系や再起不能になるレベルの攻撃魔法、魔術は禁止の 実質学生の大会でもやるのかというレベルのルールでの開催となった。ここで魔法と魔術の違いについて簡単に説明しよう。
魔法とは、単純な命令や魔力変換の末に行使が可能なもので、
魔術とは、例えば魔法を複数組み込み複雑な術式を構築することを指すが、
この魔法と魔術との定義は実は曖昧で、 一般的には高い効果をもたらす術を魔術と呼ぶことが多い。観客からはこのルール変更について大きくブーイングがあったが、ルールの再変更はないようだ。
第一試合から順調に試合は進んでいき、彼の出番がやってきた。
審判が試合の開始合図を行う。「Bブロック第四試合、TKO有の予選をこれから始めます!」
彼の対戦相手はこの街の数少ない貴族の長男のようだ。
さすがは貴族、立ち振る舞いは剣術をしっかりと 修められている師匠がいるのだろうが、気になることが一つ。貴族の息子から感じ取れる自然魔力の「色」
厳密には魔力に色はないのだが、
長く戦闘経験のある魔術師は相手の漏れ出る魔力を色彩化しどんな戦闘タイプを好むだとか、
もっと言ってしまえば今何を考えているのか読み取ることができる者もいる。彼は相手の思考まで読み取ることはまだできないが、貴族の息子はわかりやすかった。
(こいつ、どんな手段を使っても俺に勝つ、いや殺す気だな)
「試合、開始!」
最初に動いたのは貴族の息子だった。
開始と同時に彼に向って貴族が鋭く突進する。先日戦ったユニコーンよりも突進速度は遅い。
余裕で躱そうとするが、振り上げられた剣は囮で体術による初撃を入れてくる。右膝から彼の腹めがけて繰り出される蹴りを、右手で持った剣の柄で合わせて防ぐ。
初撃を防がれた貴族は「チッ」と小さく舌打ちをし、
追撃として剣で彼の目を正確に狙ってくる。バックステップで横に薙ぎ払われた貴族の剣から最小限の動きで躱し、
一旦距離を取る。初撃と二撃目を完璧に防がれた貴族は少し苛立った様子で彼を煽り立てる。
「ユニコーンを単独で討伐したと聞いていたがこの程度か!四段目の魔物も強くなさそうだな」
「そのユニコーンを討伐するときに君はいないようだったが、
君が倒しにくればよかったんじゃないのか?」「はっ!これだから平民は何もわかっていない!
貴族の責務ということを!貴族とは、民草を守るもの! 魔物を倒すことが貴族の仕事ではない!」「そうかい」
ご丁寧にそんなわかりきったことを説明し、そして奴のあの顔。
(やはり何かあるな)
その時持っている剣から鼻をツンと刺激する匂いに気づく。
注意して見ると奴の右膝をガードした柄部分から匂いが発生している(これは腐食か?)
改めて貴族の装備を確認する。
(奴の装備、ずいぶんと珍しいものを使っているなとは思ったが、そういうことか)
明らかに対腐食性を元に設計されている。
両ひざにはテンザライト鉱石をあしらわれた、
腐食を軽減する加工がされている。木剣の色も彼が持っている物より多少深い色をしており、
恐らく深緑の剣だろうと推測できる。真剣よりはもちろん切れ味は劣るが、通常の木剣よりも軽くて取り回しがよい。
加えて、こちらも対腐食の性質を持つ。通常は腐食攻撃を使う植物系の魔物を討伐するときに装備が溶け、
劣化するのを防ぐために用いられることが多い。これは装備の性質を利用した、「毒装備」だ。
見たところ、テンザライト鉱石をあしらわれた両ひざと両肘、
深緑の剣以外に対腐食加工が施された様子はない。躱すことはそう難しくないが、奴の持っている攻撃手段が腐食による攻撃だけとは限らない。
勝負を長引かせるのは悪手だ。木剣同士で打ち合うのも得策ではない。
ユニコーンを討伐した威力では最悪奴を殺しかねない為、
最悪の場合はお尋ね者確定である。ならばどうするか
木剣による打ち合いではなく魔術で、奴を殺さず無力化する。「あの手でいくか」
彼が木剣を地面に突き刺すと会場がざわめく。
(諦めたのか…?)
彼が右手の手の平に意識を向けると、初級魔法のファイアボールが浮かび上がる。
どうやら腐食攻撃に気づいたようだが、
防ぐ手段が遠距離攻撃か、全く分かりやすい奴だな! とでも言いたげな不敵な笑みを貴族が浮かべる。(ここからだ)
彼がもう片方の左手の手の平からウォーターボールが出現する。
「凍れ」
彼が命じるとウォーターボールが氷の塊に性質を変化させる。
この試合を見ていた金髪の彼女が思わず声に出す。「二種同時の魔法行使に片方は性質変化、
それなのにファイアボールは安定して維持されている…」「嬢ちゃん、あれが魔術戦の“基礎”だぜ。しっかり見ておくんだな」
白髪の剣士はどこか懐かしいものを見るように呟く。
左手の氷塊には魔力糸を接続させ、空中に固定し
右手のファイアボールも同様に魔力糸を接続しているが、接続本数がおよそ二十本。一つの操作なら一本の魔力糸で事足りるが、今回は違った。
右手のファイアボールから更にファイアボールを連続で貴族の周囲に発射。
精密にコントロールされたそれは貴族めがけて直進したがどれも命中はしない。
それを見た貴族は更にニヤリと笑い「何を始めるかと思えば、ファイアボールの連続射出か!それもどこを狙っている?」
無言で貴族を指さす。
「何を馬鹿なことを」
命中しなかったファイアボールが、貴族の周りを取り囲むように静止している。
発動から射出された魔術はその時点で「工程を終了」している。
本来空中で動きを止めるように追加で命令を出すことも、魔法を維持することも不可能。
それゆえ、目の前で動きを止めたファイアボールの挙動が
信じられなかった貴族は思考と動きを停止する。 注意していたはずの左手の氷の塊からも、意識ができなくなる。「なんだこれは、一体貴様はなんなんだ!?」
「さあな」
一斉にファイアボールが貴族へ全方位から集中して直進を始め、
爆炎と共に濃い土煙を上げる。「この程度、一発食らうことを前提に回避することは可能だ!」
「ああ、そうだろうな」
貴族がファイアボールの雨を抜ける先を選んだのは比較的層が薄い箇所。
それが罠とも知らずに。
逃げ込んだ先には先回りした彼が左手の氷の塊を前に構えている。氷塊が彼の魔力によって形を薄く変化させ、貴族の四方八方を氷の壁で取り囲む。
「なんなんだ、こんなの知らない!ふざけるな!ここから出せ!!」
貴族の悲痛な叫びとともに、力任せに木剣を薄く張られた氷の檻に叩きつける。
何度も打ち付けられるが、氷の檻にはヒビどころか傷すらつかない。「どうして壊れない!!」
「壊れないさ、その氷の檻は固定しているんだからな」
「何をわけのわからないことを!くそっ、くそぉ!」
「さて審判、俺はこれからこいつで奴をあの空間ごと焼くが、どうする?」
手には形状を大弓にされたファイアボールだったものに、
矢の形状に変化させたファイアボールを番える。審判が観覧席の方をちらっと確認する。
すると開催の責任者が手を小さく上げる「試合終了!勝者八番!」
わぁぁぁ!と歓声が上がる
曲芸じみた見たこともないだろう魔術の「応用」を目にした観客たちが沸き立つ。「今の、先生も見たことある?」
「性質変化や形状変化は見たことはあるが、
空中で魔法を止めて狙いを途中で変えることは見たことがねぇな。 悪い嬢ちゃん、基礎とは言ったがあれは正真正銘の魔術だ」「正真正銘の魔術…」
幼少期に魔術と呼ばれるものは見たことがあったが、
自由自在に魔法をコントロールし、 単純な魔法操作だけで複雑な命令を追加で出すことは見たことがなかった。「まぁBグループの決勝に行けば奴と当たる。
そこで奴の本気を引き出して見せるさ」歩みを止めた彼女を気にせず上機嫌で先を歩く白髪の剣士。
「本当に皆さん、王国のために尽力して下さり、ありがとうございました」最後の戦いから数日後、傷が癒えた頃に女王陛下から感謝の言葉が述べられた。王国の水問題はカノンの尽力により普及工事が進んでおり、こちらも飢える寸前で解決へ向かっているようだ。「ベンジー騎士団長亡き後、現在は空席のままですが、ハクロウ副団長を騎士団長に昇格し、そしてレルゲン、貴方を副団長に任命致します。よろしいですね?」二人が同時に答える。「「謹んで拝命致します」」ナイトの討伐と、王国を狙った数々の暗躍が終了した事を祝して祝勝会が開かれた。「しっかし、俺がボウズ直々の上官とはねぇ…功績を考えたら普通逆じゃねぇ?」「私専属の騎士ってだけで、今まで普通の騎士と同じ階級なんだから妥当でしょ」「いやぁ、俺片腕無くなっているしよ…」「それなんだがハクロウ、無くなった左腕について話があるから後で」「ん?ここじゃダメなのか?」「まあな」「まぁいいか、んじゃ嬢ちゃん達をあまり待たせるなよ」「ああ」短い挨拶だったが、一時は死にかけていたハクロウも晴れやかな表情をしている。貴族に挨拶をして回っているマリーを見つけ、半ば強引に話しかける。「マリー、ちょっといいか?」周りの貴族達に別れを告げて、マリーがレルゲンの前に来る。「どうしたの?」「俺と一曲、踊ってくれるか?」その直球な物言いにマリーは少し驚いた表情をしたが、すぐにレルゲンを見つめ返し、返答する。「喜んで」簡単な踊りではあったが、マリーは笑顔は眩しく、また幸せそうな顔をしている。そこはレルゲンとマリーだけの空間、もちろん他の貴族達も一緒に踊ってはいたが、周りも気を遣って少し距離を空けてくれている。(マリーと踊れて良かった)(私も、公の場で貴方と踊れたのは本当に嬉しいわ。セレス姉様の事もあるし…)(今は周りの目は気にせずに一緒に楽しもう)(そうね)二人だけにしか聞こえない、踊りの中での魔力糸での思念会話は、心の距離の近さを象徴していた。マリーとの踊りが終わってから、セレスティアの姿が見えない。気になったレルゲンは少し辺りを見回して彼女を探すが、どこにも姿は見当たらない。女王にも直接聞いてもみたが、分からないと返答された。思い当たる所は後一つ。セレスティアと初めて会った中庭。初めて念動魔術の物質分離が成功し、
得意気に笑うレルゲンを見て更に思考が乱れていく。ナイトは一度落ち着くために深呼吸をするが、この間にも魔力障壁が加速度的に速く、そして鋭くなっていくマリーが魔力障壁をどんどん破壊していく。加速しきったマリーは今や分身して見える程だ。こうなってしまってはレルゲンといえど加勢しようとすると逆に邪魔になる。「やあぁぁぁぁ!!!!」剣が加速する度にマリーの気合いも上がっていく。ナイトが保険のために用意した魔力障壁がもうじき全て破壊されるタイミングで全身から真紅の魔力が噴き上がり「いい気になるなよ!」口調が荒っぽくなり、衝撃派ではなく純粋な魔力衝突によりマリーが後方に吹き飛ばされる。壁に勢いよく激突し、少しの亀裂が入るがマリーの意識はまだ失われていなかった。ようやく回りを俊敏に動いていたマリーを止めることに成功し、ナイトに余裕が戻る。「なまじ強いと大変ですね、おや?それにしても今のをもろに浴びてその程度ですか。レルゲン君、ではありませんね」一拍おき、ピシッと額に血管が浮き出る。「貴女…今、念動魔術を使いましたね?」痛みを堪えながらも笑って見せるマリー。「死になさい」最後の一撃を入れようとするナイトにセレスティアがどの上位魔術にも属さない、しかし威力は上位魔術にも引けを取らない詠唱破棄の独自の魔術を発動させる。「させません、マルチ・フロストジャベリン」無数の氷でできた槍を空中からナイトに向けて放つ。「そんなところにいたのですか。貴女までも…と思いましたが、これはどうやらレルゲン君ですね」静かにレルゲンがセレスティアを地上に下ろし、マリーの治療のためにセレスティアが駆け出す。「回復なんてさせませんよ」念動魔術で強引に止めるが、それでも何とか前に進もうとするセレスティア。しかし身体を完全に固定されて進めない。「ここからでは射程が遠くて回復魔術を使っても意味がありませんよ。大人しくそこで横たわる第三王女を見ていなさい」ナイトがセレスティアからレルゲンに向き直る。「ではレルゲン君、ついに一騎打ちです。私の懐に入れれば君の勝ち、こられなければ私の勝ちです」「それはどうかな、まだ気が早いんじゃないか?」「何を言っているのです?もう彼女達の加勢は不可能でしょう」セレスティアからマリーへ伸びる、一本の魔力糸。否、逆だ。“マリーが伸ばした”魔
「素晴らしい!皆さん本当に素晴らしい!誰も欠けることなく私の最高傑作を打ち倒すとは。特にユゥに入れた最後の一撃!私は感動しましたよご老人!流石は年の功ですね。ですので」パチンと指を鳴らし、レルゲンが帯同させていた鉄剣が螺旋状となり一瞬で高速回転する。「は?」何も命令を出していないはずのレルゲンの鉄剣が螺旋を描き、ハクロウの左肩に命中。勢い収まることなくその後ろにある壁をも貫き、見えなくなる。「くそ…しくったか…」ハクロウの左腕が肩口から螺旋剣に抉り飛ばされ、酷く出血する。「なんで…くそ、ハクロウ!」「こっちを見てんじゃねぇレルゲン!俺なら大丈夫だからよ…そっちはあいつに集中しろい」即座に帯同している残り四本の鉄剣を外へ飛ばす。残る武装は黒龍の剣と白銀の細剣のみ。肩で大きく息をするハクロウ。出血量はセレスティアが負わされた時以上、間違いなく致命傷だ。慣れた魔力糸捌きでハクロウの応急処置をし、止血する。注意はナイトに向けたまま、感覚のみで手術を行う。出血量が少なくなったところですかさずハクロウが回復薬を飲み、完全に止血が完了する。肩で息をしていたハクロウの呼吸が落ち着き、安堵する。その様子を見たナイトが一言。「手術の速度と精度も上がっていますね。実に素晴らしい成長だ」それを聞いたレルゲンは魔力を全て解放し、もはや黒と形容してもいい程の赤い色の魔力が全身から迸る。我を忘れ、今にもナイトへ突っ込んでいきそうなレルゲンを止めたのは、マリーとセレスティアだった。ただそっと二人が両手を握り、優しく魔力をレルゲンに流す。全身から迸る赤い魔力がフッと消え、我に返る。「ありがとう、二人共」マリーとセレスが頷き、構えを取る。セレスが高速詠唱でバフを二人にかけている最中、時間を潰すかのようにナイトが語り始める。「シュットくんの魔力はどんどん濃さが増していますね。色を見れば明らかですが、魔力総量だけ見れば既に私を超えているでしょう」「レルゲンだけしか見えてないって言いたいのかしら?」マリーが挑発するようにナイトを煽る。「いえいえ、そんなことはありませんよ?マリー・トレスティア。貴女方には正直期待していませんでしたが、シュット君を献身的に支える姿には涙が出るほどです」煽ったつもりが煽られたマリーは顔をしかめるが、ナイトの余裕を崩すには
(やはり魔力糸なしの念動魔術で操作していたか)「どういうこと?」マリーがレルゲンに説明を求める。「簡単にいうと、こいつらを動かしているのはナイトの念動魔術だ。だから最初から見やすい位置に陣取って“操作していた”んだ。ナイトが操っているから念動魔術も使える」レルゲン以外の三人が驚きの声を上げる。今までのこの攻防を全て一人で演出していた。それこそまさに旅の行商人が連れ歩く人形使いのようではないか。ここまで並列に思考を分けて、狙いを絞り、作戦を共有させる。念動魔術の極地とも言える技の結集にレルゲンは素直に驚きと共に、上の世界を見た。「仕組みを理解したところで、今のレルゲン君には操作権は奪えませんよ」「そうかもな」最初はマリーとアイとの相性が悪いことから前衛を変える選択をしたが、アイの影移動とユゥの回復、どちらを先に叩くか──間違いなくアイの影移動の方が厄介だ。となればレルゲンが自らアイと一対一の戦いをしても良いが、それだと次のナイトと戦う事を考えると魔力が枯渇しかねない。寧ろ次を考えるなら、レルゲンが回復魔術を使うユゥを発動させないように釘付けにし、マリーとハクロウ、セレスティアにアイを討ち取ってもらった方がいい。アイとユゥ、どちらかが欠ければ後は消化試合のはずだ。「俺がヒーラーを抑える。みんなは影移動の方を叩いてくれ」「任せて」「あいよ」短いやり取りだが、即座にマリーとハクロウがアイに切りかかっていく。マリーが連続剣の加護を発動させて、ハクロウがそれのサポート。三人で戦っていた時はこんな戦法を取ることが多いのかなと考えたが、目の前のユゥに集中して回復の隙を与えないように立ち回る。マリーが連続剣の加護が発動してから速度が上昇し切るまではハクロウと一緒に前衛をこなすが、加護の速度が乗り切った後はマリーのみで前衛を任されるのが一つの勝ちパターンだ。次第に速度が上がっていくが、ここでアイが速度鈍化のデバフスキル「ダウン・ザ・ピッチ」をかける。またガクンと一瞬速度が落ちるが、セレスティアがそれを即座にカバーする。「ライト・スピード」下がった分即座に速度バフがかかり、マリーの口角も上がる。更に上がある、もっと先へ行ける。そう感じてからの攻撃速度はマリーを能力以上の速さへと進化させる。堪らずアイが影移動で離脱しようとするが、これをセ
建物の入り口を潜ると自動で閉まっていく。一度入れば最後、どちらかが全滅するまでこの扉は決して開かないだろう。もう緊張も迷いもない。皆がただ勝利を信じてここへ立つ。中へ入ると軍服を着た少女が二人。奥にはナイトも見える。軍服の少女達とナイトを一度に相手取るように見えたがナイトが下がり、玉座とも取れる椅子に腰掛ける。「アンタは高みの見物か」レルゲンがナイトを煽ると、ナイトがにやっと口角を上げて答える。「その娘達は私の“最高傑作”です。私をここまで待たせたのですから、じっくり味わいたいではありませんか。それと油断していると幾らシュット君でも、死にますよ?」「俺の「挨拶」に耐えたんだ。そんなつもりはないさ」帯同させる剣の中には、ドライドが丹精込めて鍛え上げた剣もある。刀身は白銀で細く、細剣に近い形状を取る。鍔部分はアシュラ・ハガマの増幅鉱石があしらわれており、他にも王国から直接貸与された名剣とも呼べる切れ味を誇る鉄剣が五本。黒龍の剣も入れれば計七本の剣を扱うこととなる。マリーとセレスティアの装備は変わらず、ハクロウのみ魔物討伐の時から日本刀のような形状の刀を二本、始めから抜刀している。レルゲン達に対する軍服の二人組は、片方が短剣を両手に一本ずつ持ち、もう片方は片手直剣を持っている。レルゲンの挨拶の時は両者共何も持っていなかったが、最初から武器を手にしている事から、挨拶時は始めから「どちらも本気ではなかった」のだ。レルゲンの額から汗が流れ、地面へと落ちる。「いくぞ!!」両陣営共駆け出す。前衛はマリーとハクロウ、レルゲンは遊撃として一歩下がり、セレスティアは小声で攻撃魔術の詠唱を始める。最初は様子見とばかりにお互い魔術の追加攻撃はせずに前衛同士の鍔迫り合いが繰り広げられる。レルゲンも鉄剣を一本ずつ相手の横腹に射出するが、あっさりと短剣使いは弾き、片手直剣の方は素手で弾く。射出速度と剣の切れ味から考えても無傷で防げるとは考えづらい一撃だが、ここでレルゲンが挨拶をした時に放った赤い光線を両者とも素手で受け止めていたことと重なる。(やはり身体の構造的に何かあるな)ちらっとナイトの方を見るが依然として動かず、表情も変えず、戦いを楽しむように観戦している。レルゲン剣を弾いた直後に両者とも鍔迫り合いを止め、剣戟が室内に響く。マリーとハクロ
五段階目の討伐で自信をつけたマリー達は少しの休憩の後、五段階目一体、六段階目も一体討伐して帰還して来たのだった。六段階目は魔力量と大きさ、一撃の破壊力は大きいがセレスティアは標的にならない程前衛二人の働き凄まじくアシュラ・ハガマに似た形状の魔物を討ち取ったのだった。王国に帰還してからというもの、レルゲンにこの事を報告に行った三人は気力、魔力が尽きかける限界近くまで消耗はしていたがそれでもやり遂げたのを見て、レルゲンはただ一言「お疲れ様」と労った。それから発注した武器が完成するまでは、レルゲンは三人の連携を崩さないように立ち回り援護に徹することが多く、念動魔術による牽制くらいしか必要としない力量まで実力が底上げされていた。この成長ぶりにはマリー達自身も驚いており、レルゲンも背中を預けられると安心していた。武器が出来たとドライドから連絡が入り、早速届いた剣を試し斬りするべく、鍛冶屋の裏に周る。「この前の黒龍の剣とは違って、どっちかっていうとマリー嬢ちゃんの魔剣に近いな。要望通り作りはしたが、どんな目的があってそんな仕様にしたんだ?」掻い摘んでドライドに話す。「それをしたところでなぜそうなるんだ?」と返って来たので、説明が難しいと言って逃げる。試し斬りだけして切れ味を確かめ、要望通りの品質を確認してドライドに感謝を伝えた後に持ち帰るのだった。実は新しい武器はレルゲンが幼少期に体験したある出来事が元になっている。まだ魔法すら使ったことのない年齢のレルゲンが、火炎魔法を発現させたと大騒ぎになった事があった。結果的には魔法の痕跡は無く、原因が分からないまま終わったが、それを見た両親がナイトを家庭教師としてつけて魔術を教えることとなるのだが、レルゲンは今でも鮮明に覚えている。“この世は魔で満ちている”魔術適正が無くても、魔法くらいなら誰でも出来るのだという確信がレルゲンを形作った。その手段を魔術で応用することによって、真の魔術として昇華させる。まさに十八番ともいえるレルゲン独自の技の基礎だ。準備は整った。敵の本陣とも言える座標に徒歩で向かう。相変わらず魔力揮発剤が常時巻かれており、魔物が寄り付かない道がこの深い森の中に出来ている。森を抜け、木々が不自然に生えていない場所に出ると陽の光が入り込み、暖かな日差しが差し込んでくる。芝の上
後一歩のところで上空に感じた覚えのある魔法陣が闘技場全体を覆う。お互いに戦闘を瞬時に中断し、何が起きているのか情報を集めようと周囲を見渡す。(これはユニコーンの時と種類は違うが、同じ奴が起動しているな。となると魔法が飛び交っていた闘技場の魔力を使ってまた魔物を召喚するつもりか?だがそれならもう対策はある)彼が右手を空に掲げ、自身の知覚できる感覚を広げる。仮想的に可視化させた周囲の環境を取り巻く魔力を一点に集めるべく、魔力糸無しで念動魔法を発動させる。だが、彼の思惑通りにはならなかった。確かに魔術の発動は出来た、一瞬だが周囲の魔力を集めることも。しかし、魔術の「継続」が出
大会もいよいよ最終戦木剣のみの打ち合いになる相手はどんなお貴族様かと思っていたら「なるほど、相手は君か」「ええ、まず試合が始まる前に謝罪をさせて頂戴。私が有利になるルールに何度も変えさせて」「いいさ、結果は変わらないからな」「ふふっ、貴方そんな冗談も言えるのね」その冗談とは、これほどまでの縛りルールでも勝てると思っているのか。またはそんな減らず口を言えるタイプだったのかと思っているのかは分からないが、お互いに決勝まで駒を進めてきたもの同士。気分が高揚していた。「特別試合、始めてください!」最初に動いたのは彼女の方だった。木剣の種類は彼女の背丈には不釣り合いな長さで、
「うちはこの辺じゃ珍しい風呂付きさ」なんと、この街の宿で風呂など全く期待していなかったのだが、これは何ともありがたい。「手伝うよ」「遠慮するよ、そんな大荷物、ここまで大変だったろう?部屋で風呂と飯が用意できるまでゆっくりしてな」「お部屋はこっちだよ」「そこはこちらになります、だよ!まったくもう」呆れた声色で苦笑いした女店主。「悪いね、旅のお人よ。まだ子供だから多めにみておくれ」「気にしてないよ」「もう!二人とも子供扱いして!ふんだ」怒りながらも案内のために店主の娘が二階に向かって階段を上がると、木でできた階段が少し軋む音がする。築年数を感じさせるような雰囲気で、彼の
彼の朝は早い。日が昇ると共に起き、朝食の準備を始める。といっても用意するものは前日から仕込んでおいたところに取りに行くだけだ。寝床から用意した場所まで行くまでの間は、彼の周囲は多少湿った草花と土の香りが僅かに漂い、仄かに朝露を連想させる霧が薄く立ち込めていた。霧を掻き分けて少し、川のせせらぎが聞こえてくる。ここで大きな欠伸を一つ。日々の習慣とはいえ、眠いものは眠い。用意していた仕掛けに到着。仕掛けと言っても罠や餌でもなく、ただ単純に川の水を一部頂いているに過ぎない即席のダムと言っていいだろう。到底一人では成し得ない、ましてや一夜で用意するなど真っ当な手段では難しい規模の即席ため







